誘惑のモロッコ8日間
毎年食べていた恵方巻きを今年は食べなかった
一人暮らしで変わったことは山ほどあったけど
一瞬で慣れてしまう
変化に貪欲でありたい
ターキッシュエアラインの機内食は美味しくて
ファンタビを見ながら考え事をしてた
たくさん写真を見返して
次はあそこに行きたいとか
ノルスタジックな気持ちに浸る
羊と鋼の森も見て
恩田陸の文学的な感じが伝わってきて本を読みたくなった
映画6本、本1冊を読み終えた旅
イスタンブールの空港は案外広くて
ボヤボヤした体を動かして
ミールチケットでパサパサのデカイバーガーキングを頬張りながら過ごす5時間
喋ってたらあっという間に終わった
モロッコについてまたバスに揺られる
こんなに遠いところに来たのは初めてで
1つ1つに感動しながら夜
暖色のランプが点々とするシャウエンのホテルに到着
優しくて薄味のモロッコの料理
顎関節症のパン好きはタチが悪い
忘れられない1日は
私が生きてきた中にもいくつかあったはず
シャウエンの青い街のなかで
夢の中みたいな景色
この1日を、
このモロッコでの時間を
私は死ぬまで覚えておきたい
ホテルマンも、レストランの店員さんも
モロッコ人は総じて鼻が大きくて
かっこよくて日本人に優しい
長い長いバス移動の中
車窓からは本当に広大な自然と
馬や羊、ヤギやロバの野生動物が沢山いる
サファリパークの中を大型バスで
延々と走る感覚
山の表面は日本では見られない色や質感で
もらった水を飲みながら景色に夢中になる
ヤギの頭や鶏、肉塊が並ぶマーケット
古着が雑多に並ぶフリマ
外国感に揺られながら
日本と時差8時間の街を歩く
夜中、テレビから流れる
なんてことない野生動物の生態紹介番組みたいなやつで見た
知らない世界の
遠い地域の話
かわいた土色の芝生
砂漠に向かうバスの中は
少しずつかわいていく気がした
隣の人の納豆みたいな足の臭いに
気をつられたりしながら
うとうとしてまた7時間
時間なんてきっといくらあったって足りないのだから
間違えるまで同じことを頑張りたい
しくじるまで没頭したい
つまづいてもまだ挑戦したいと思えるものに
1つでも多く出会いたい
少しずつ少しずつ木も草も無くなって
抹茶を振りまいたみたいな山
色水を綺麗にこぼしたみたいな空
乾燥地帯には雲がない
ラクダに乗って見る朝日が
満天の星が
心地いい揺れと
肌を刺す冷たい寒さで記憶される
冬の砂漠の砂は冷たくサラサラしていて
夜明けのオレンジに映えた
タジン鍋の愛らしい形を至る所で見て
自分でも食べて
レンガを切り落としたような家の集落に
少しずつ慣れる
いつか世界史で習った
ベルベル人はここに住んでいた
王様っていう概念もわたしにはよくわからない
王宮や宮殿が建ち並び
アラビアンコーストみたい
なんて安い感想で浮かれながら
必死で覚えたカタカナの名前が
ここでは普通に使われて
私の知らない当たり前の世界が存在してる
たくさんのタイルで細々しく並べられた壁をいくつも横切りながら
すごい、すごいと声に出して
いくつもカメラのシャッターを切る
いくつも見たモスクの中で一番大きくてカッコよかったカサブランカのモスク
もやのかかった最終日を終えて
日本に帰る
丸一日ほどかかる帰路の飛行機で
コーラを飲んだ
読書灯の光に透ける茶色が清涼感を感じさせるのに
舌の上で甘ったるい
コップの内側に張り付いている泡が
少しだけ可愛かった
最後の一口は炭酸も抜けて
くどくて甘い別の飲み物みたいだった
着陸前の飛行機から見える千葉が好き
びっしり灯る電灯の白くてオレンジの街が好き
チラチラと光る車のランプも
血管を走る光みたいで楽しい
楽しかったなあ
モロッコに行ってきました